問い詰めるまえに

不貞行為のラインはどこから?キス・食事・LINEは入るのか、最高裁の定義から整理

最終更新 2026年7月17日決めるまえノート編集部

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「これって、不倫と言えるのだろうか」——配偶者と誰かの親密なやり取りを見てしまった。二人で会っていたことを知った。でも肉体関係があるかは分からない。どこからが「不貞」で、自分のケースはラインを越えているのか。それが分からず、このページを開いた方が多いと思います。

結論から言うと、法律上の「不貞行為」の中心は性的関係があるかどうかです。最高裁の判決が示した定義があり、キス・食事・メッセージのやり取りだけでは、原則としてラインの内側(不貞行為までは至らない)とされています。

ただし、「不貞にあたらない=何も問えない」でもなければ、「怪しい=不貞」でもありません。この記事では、最高裁の定義、ケース別のライン、不貞にあたると何が起きるか、時効の基本、そして疑いの段階でやってはいけないことまで、公開されている法律情報をもとに整理しました。

なお、この記事は公開情報を整理した一般的な解説であり、個別のケースの法的判断ではありません。最終的な判断は弁護士に相談してください。

先に結論:ラインを決めるのは「性的関係」の有無

まず、いちばん知りたいところに答えます。

✓ ここが要点

法律上の「不貞行為」とは、最高裁の定義で「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」です。要素は4つ——①配偶者がいる人が ②自由な意思で ③配偶者以外と ④性的関係を結ぶ。この4つがそろって初めて、離婚の理由になる「不貞な行為」(民法770条1項1号)にあたります。逆に言うと、キス・二人での食事・LINEのやり取りは、④がないため原則として法律上の不貞にはあたりません。

「気持ちの上では完全に裏切りなのに、法律ではセーフなのか」と感じた方もいるはずです。その感覚は間違っていません。ここで大事なのは、感情のラインと法律のラインは別物で、離婚や慰謝料を考えるなら法律のラインで組み立てる必要がある、ということです。この記事では法律のラインを整理します。

法律上の定義:最高裁が示した「不貞な行為」

不貞行為の定義は、法律の条文には書かれていません。民法770条1項1号は「配偶者に不貞な行為があったとき」に離婚の訴えを起こせる、と書いているだけです。

その「不貞な行為」の中身を示したのが、最高裁判所の昭和48年11月15日の判決です。この判決は、不貞な行為を「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とし、さらに「相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない」と述べました。

かみ砕くと、こうなります。

  • 中心にあるのは性的関係(肉体関係)の有無
  • 「自由な意思で」=強制されたのではなく自分の意思で関係を持ったこと
  • 相手側の事情は問わない=相手が同意していたかどうかで、既婚者側の不貞の成立は左右されない

また、不貞行為は離婚の理由になるだけでなく、民法709条(不法行為)に基づく慰謝料請求の対象にもなります。配偶者と不倫相手の両方に責任が生じ得る構造(共同不法行為・民法719条)です。

ケース別のライン:どこまでがセーフで、どこからがアウトか

定義を実際のケースに当てはめると、次のように整理できます。

ケース 法律上の不貞行為にあたるか
配偶者以外との性交渉 あたる(定義の中心)
性交渉までは至らない性的な行為 グレー。不貞または「不貞に準ずる行為」として慰謝料が認められる傾向を指摘する解説があるが、事案次第
キス・ハグ 原則あたらない。ただし態様・継続性によっては慰謝料の対象になり得るという指摘がある
二人での食事・デート 原則あたらない
LINE・メールで「好き」と言い合う 原則あたらない
手をつなぐ 原則あたらない

※ 表は横にスクロールできます

表の下3つを見て、「じゃあ何をされても法律では動けないのか」と思うかもしれません。そうではなく、2つの補足があります。

1つ目。食事・メッセージ・キスといった事実は、それ単体では不貞にあたらなくても、親密な関係を示す間接的な材料にはなり得ます。実際の裁判では、肉体関係そのものを写した直接の証拠はまず存在しないため、間接的な事実の積み重ねで「性的関係があった」と推認できるかが争われます。どんな事実にどれくらいの重みがあるかは、不倫の証拠の記事で証拠の強さの順に整理しています。

2つ目。不貞行為までは至らない行為でも、程度によっては「夫婦の平穏な生活を壊した」として慰謝料請求の対象になる可能性を指摘する弁護士解説があります。ここは白黒がはっきりしない領域なので、「不貞じゃないから無理」と自分で結論を出す前に、事実関係を整理して弁護士に確認する価値があります。

不貞行為でも、慰謝料が認められないことがある

ここは見落とされがちですが、動く前に知っておくべき例外です。

! ここに注意

不貞行為の証拠がそろっていても、慰謝料が認められないケースがあります。

代表的なのは、不貞の時点で夫婦関係がすでに破綻していた場合です。最高裁の平成8年3月26日の判決は、肉体関係を持った当時すでに婚姻関係が破綻していたときは、特段の事情がない限り、不倫相手は慰謝料の責任を負わないと判断しました。慰謝料の根拠は「夫婦の平穏な共同生活」という利益の侵害なので、その利益がすでに失われていたなら侵害も成立しない、という理屈です。

たとえば長期間の別居中の関係などは、この「破綻」にあたるかが争点になります。証拠を集める前に、いまの夫婦関係が破綻と評価されないかも含めて、弁護士に見立てを聞いておくと、動きの無駄がなくなります。

もう1つ、細かい点ですが誤解が多いので1文だけ。不倫相手に請求できるのは「不貞そのもの」への慰謝料で、「離婚したこと自体」の慰謝料は特段の事情がない限り不倫相手には請求できない、という最高裁の判断(平成31年2月19日)があります。この区別は専門的なので、当てはまりそうな場合は弁護士に確認してください。

時効が近いなら、先に弁護士へ

慰謝料の請求には時効があります。動くタイミングに関わるので、基本だけ押さえてください。

不貞行為にもとづく慰謝料請求の時効は、民法724条により「損害および加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」が目安とされています。「知った時から3年」——つまり、不倫相手が誰かを知った時から時計が動き始めます。

3年は、長いようで短い期間です。話し合いを試み、様子を見て、証拠を集めて……としているうちに残り時間が減っていきます。もし不貞を知ってから時間がたっているなら、証拠集めより先に、弁護士に相談して時効までの残り時間と、時効の進行を止める手立て(法律用語で「時効の完成猶予・更新」=時効のカウントを一時停止・リセットする手続き)を確認してください。時効の判断は事案ごとに複雑で、この記事の3年/20年はあくまで基本形です。

「不貞かも」と思った段階で、やってはいけないこと

最後に、ラインの知識と同じくらい大事な、動き方の注意です。疑いの段階の行動で、その後の選択肢が大きく変わります。

やってはいけないことは3つあります。

確証がないまま問い詰めない。 → 問い詰めた瞬間に相手は警戒し、メッセージは消され、行動は慎重になります。不貞の事実があった場合、証拠の確保は問い詰める前にしか、実質できません。

相手のスマホを勝手に見ない。 → ロックを解除して中を見る行為は、方法によっては法律に触れるおそれがあり、違法に得た情報は話し合いでも裁判でも使いにくくなります。くわしくは自分で証拠集めをする違法ラインで整理しています。

GPSを勝手に取り付けない。 → 相手の車やカバンへのGPSの取り付けは、ストーカー規制法の規制対象になり得ます。線引きはGPSの違法ラインを読んでください。

では、何をするのがよいか。まず、気づいた事実を日付とともに記録すること(自分の記憶の記録は合法で、あとで時系列を組み立てる土台になります)。次に、証拠にはどんな種類があり、何が強くて何が弱いかを知ること。そのうえで、自力で集めるか、探偵に頼むか、先に弁護士に相談するかを選ぶこと。この全体像は不倫の証拠の記事が入り口になります。

自分の状況がどの段階か整理したい方は、浮気の可能性チェックも使えます(統計的な傾向にもとづく自己整理のツールで、診断や事実の証明ではありません)。

よくある質問

不貞行為とは、法律ではどう定義されていますか?

最高裁の判決(昭和48年11月15日)で、「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と示されています。ポイントは4つで、①配偶者がいる人が、②自由な意思で、③配偶者以外の相手と、④性的関係を結ぶ——この4つがそろったときに、離婚の理由になる「不貞な行為」(民法770条1項1号)にあたるとされます。カギになるのは肉体関係の有無です。

キスやハグは不貞行為になりますか?

原則として、キスやハグだけでは法律上の「不貞行為」にはあたらないと考えられています。不貞行為の中心は性的関係だからです。ただし、態様や継続性によっては、不貞行為までは至らなくても「夫婦の平穏を壊した」として慰謝料の対象になる可能性が指摘されています。白か黒かで割り切れない領域なので、具体的な事情をもとに弁護士に確認するのが確実です。

二人で食事した・LINEで「好き」と言い合っていた場合は?

それだけでは、法律上の不貞行為には原則あたりません。不貞行為の定義には「性的関係を結ぶこと」が含まれるため、食事やメッセージのやり取りだけでは要件を満たさないからです。ただ、こうした事実は「親密な関係だった」ことを示す間接的な材料にはなり得ます。気持ちの上で許せるかどうかと、法律上の不貞にあたるかどうかは、分けて考える必要があります。

不貞行為の慰謝料には時効がありますか?

あります。不倫相手と不貞の事実を知った時から3年、または不貞行為の時から20年が民法上の時効の目安とされています(民法724条)。「知った時から3年」は思ったより短く、証拠を集めているうちに近づいてくることもあります。時効が心配な状況なら、証拠集めより先に、弁護士に相談して時効を止める手立てがあるかを確認してください。

配偶者の不貞を疑ったら、まず何をしたらいいですか?

焦って問い詰めないことが第一です。確証がない段階で問い詰めると、相手は警戒して証拠を消し、その後の話し合いも調査も難しくなります。また、相手のスマホを勝手に見る・GPSを勝手に取り付けるといった自力の調査は、法律に触れるおそれがあります。まずは事実を落ち着いて記録し、証拠の集め方と使い方を知ってから動いてください。

まとめ

  • 法律上の不貞行為=「配偶者のある者が、自由な意思で、配偶者以外と性的関係を結ぶこと」(最高裁昭和48年判決)。カギは性的関係の有無
  • キス・食事・LINEは原則不貞にあたらない。ただし親密さを示す間接的な材料にはなり、程度によっては慰謝料の対象になり得るという指摘もある
  • 不貞の証拠があっても、当時すでに夫婦関係が破綻していた場合は慰謝料が認められないことがある(破綻の抗弁)
  • 時効は「知った時から3年/行為から20年」が基本形。時間がたっているなら証拠集めより先に弁護士へ
  • 疑いの段階では、問い詰めない・スマホを勝手に見ない・GPSを勝手に付けない。まず記録と知識から

ラインが分かったら、次の分かれ道は「事実をどう確かめ、どう残すか」です。感情で動く前に、不倫の証拠の記事で証拠の全体像を知ってから、自分のケースの動き方を決めてください。それが、あとで悔やまない一番の近道です。この記事に出てきた法律用語(不貞行為・時効・求償権など)は、一次出典つきの法律用語の早見表で1行ずつ確認できます。


参考情報

  • 民法770条・709条・719条・724条(e-Gov法令検索
  • 最高裁判所昭和48年11月15日判決(不貞な行為の定義に関する判例・弁護士事務所各社の解説を参照)
  • 最高裁判所平成8年3月26日判決(婚姻関係破綻後の不貞と第三者の責任に関する判例・同上)
  • 最高裁判所平成31年2月19日判決(離婚に伴う慰謝料の請求相手に関する判例・同上)
  • 不貞行為の範囲・慰謝料に関する弁護士事務所の公開解説(複数事務所の解説を照合・2026年7月確認)

※この記事は公開されている一般的な情報の整理であり、個別の事案への法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士に相談してください。

決めるまえノート編集部

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